香典返しの持つ意味
お通夜やお葬式に参列した人は「香典」として現金をお供えします。
そもそも香典の香の字は、故人に対して先行や花を供えていたことを表します。
香典は、故人に対する供養の気持ちと残された家族に対してのお悔やみの気持ちが込められています。
そんな参列者から頂いた香典やお供え物への感謝を伝え、四十九日の法要を無事に終えたことを報告するために渡す返礼の品物を「香典返し」といいます。
満中陰志という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。
満中陰志とは、仏教で使われる言葉で、故人が亡くなった日から四十九日の間を「中陰」と呼び、その期間が満ちて忌明けを迎えることが「満中陰」です。
故人の霊が忌明けを迎えて成仏したことに対して感謝の気持ちを表すことから、主に西日本の多くの地域で忌明けのことを「満中陰志」と呼びます。
香典返しの渡し方は??
香典は、通夜や葬儀に参列した際に頂きます。
香典返しは、四十九日の法要を終えてから贈ることが一般的なので、葬儀や通夜の当日に返さず、通常は後日贈ります。
昔は、忌明け後にそれぞれ手渡しで香典返しを贈っていましたが、最近では遠方に住んでいる人やそれぞれの地域がバラバラなので、郵送で贈るのが増えてきました。
また、以前は当日返すことはありませんでしたが、住所を知らない事や個人情報の関係で住所を簡単に聞けない事が増えたため、当日に香典返しを返す場合もあります。
それを「即日返し」といいます。
即日返しのメリットは、直接顔を見て感謝の気持ちを伝えることが出来ることです。
また、配送料がかからず、配送する手間もかからないので当日にお返しする人も多いようです。
一方で、即日返しの場合は品物を前もって用意しておく必要があるので、香典返しのルールである「もらった金額の半返し」ということが出来ません。
したがって、もらった香典が高額だった場合は、忌明け後に改めて香典返しをする必要があります。
渡し方に決まりはないので、それぞれがお返ししやすい方法で渡すと良いでしょう。
香典返しに添える挨拶状とは?
職場の同様や友達から香典返しを受け取ったことがある人は、そこに自作の挨拶状が添えられていたことがあるという人もいるのではないでしょうか。
香典返しには、香典返し専用の挨拶状があります。葬儀の当日に「わざわざ足を運んでくださったお礼」や「お供え、香典、供花」のお礼をする「会葬礼状」と一緒にされがちですが、全く異なる挨拶状です。
香典返しの挨拶状には、香典への御礼の言葉、故人の名前や喪主の名前、続柄、49日の法要を無事終えたことを報告します。ここで戒名を書く場合もあります。
その後、本来であれば手渡しで渡すのが礼儀であること、略儀でお礼を述べることへのお詫びなどを書きます。
最後に差出人の名前を書きますが、親族一同と書く場合もあり、差出人=喪主の名前を書くのが一般的です。連名で名前を書くことを希望する人もいますが、ここでは喪主の名前を書きます。挨拶状は、さまざまなデザインがありますが、一般的に挨拶状は読点や句読点は必要ありません。
香典返しに挨拶状が必要な場合は?
喪主が直接持参して、挨拶とあわせて渡す場合には、お礼状は必要ありません。
また、先程説明した即日返しの場合も必要ないでしょう。
香典返しにお礼状が必要な場合は、香典返しの品物を郵送で自宅に届ける場合です。
その場合は、香典返しにお礼状(挨拶状)を添えて郵送するのがマナーです。
挨拶状には、直接渡せないことへのお礼を書きます。
一般的な手紙やハガキなどの簡易的なものではなく、形式ばったものを香典返しの品物に添えます。
挨拶状なしで贈ってもいいの?
香典返しを直接渡すことができる場合には、挨拶状は不要です。
挨拶状を添えて贈っても問題はありませんが、挨拶状にかかれている文面を直接伝える事ができるので、諄(くど)くなってしまうかもしれません。
直接渡すことができる場合は、熨斗(のし)だけで問題ないでしょう。
真っ白な封筒や便箋で、感謝の気持ちやお礼の挨拶を書いても良いですね。
挨拶状を添える場合の熨斗は?
挨拶状の有無に関わらず、香典返しには、熨斗を掛けて贈るのがマナーです。
熨斗には、黒白のしと黄白のしがあり、一般的には黒白のしが使用されます。
しかし、熨斗の種類には地域性が強く、関西では黄白のしが一般的に多く使用されます。
熨斗の表書きは、水引の上に「志」と書き、のし下には名字のみを書き記します。
フルネームを書く場合は喪主の名前を書きます。
関西地方では、先程解説した「満中陰志」と書くのが一般的です。
挨拶状のタイプと基本的な書き方
直接渡せない時に香典返しに添える挨拶状。
ここでは、宗派によってそれぞれの挨拶状の書き方を例文を交えて解説していきます。
テンプレートとして是非参考にしてみてくださいね。
挨拶状のタイプは?
香典返しに添える挨拶状のタイプには、主に2種類あります。
元々は奉書と呼ばれる巻紙タイプの挨拶状が主流でしたが、最近では郵送で香典返しを贈ることが増え、その上巻紙タイプの奉書では折り曲げて封筒の中に入れる作業があるので時間がかかりすぎるということで、短時間で作成できるカードタイプのものを利用する人が増えました。
巻紙タイプの奉書での挨拶状は、元々は手書きで書かれていましたが、最近ではプリンターで印刷して用意する場合が多いようです。
奉書の場合、少しかたい文面になるので、しっかりとした文章で香典返しを贈りたいという人は、奉書タイプがおすすめです。
カードタイプやはがきの場合は、文章が短く、相手も短時間で読めるので、簡易的なカードタイプも多く選ばれています。
仏式の場合の書き方
仏式の場合は、最初に拝啓や謹啓と頭語を書き、葬儀や通夜に足を運んでくれたことへのお礼と香典に対するお礼を書きます。
その後、四十九日の法要が終わったことの報告、香典返しの品物を贈ったこと、本来であれば喪主が直接挨拶するべきところを略儀で済ませることのお詫びを書きます。
そして最後に差出人として喪主の住所と名前、差し出し月(日付)を書きます。
差し出し月や日付は、発送日と悩む人も多いですが、四十九日の法要の日で良いでしょう。
仏式の場合は故人は「亡父 ○○」「亡祖父 ○○」と書きます。
中には「亡父 〇〇 儀」と書く場合もあります。
例文は以下のとおりです。
謹啓
御尊家御一同様には愈々御清祥のこととお慶び申し上げます
過日 亡父 〇〇 儀
死去の節には御繁忙中にもかかわりませず
御懇篤なる御弔慰を賜り尚格別の御厚志に
預かり洵に有難く厚く御礼申し上げます
お蔭を持ちまして満中陰(四十九日)の法要を滞りなく
相営み忌明け仕りました
早速拝趨親しく御礼申し上ぐべき筈では
ございますが略儀乍ら書中を以ちまして
謹而御礼の御挨拶を申し上げます
敬具
令和 元年
住所
氏名
尚 満中陰に際しまして供養のしるしまでに
粗品ではございますが何卒御受納下さいますようお願い申し上げます
神式・キリスト教の場合の書き方
神式やキリスト教の場合も、挨拶状に書く内容は同じです。
しかし、仏式で「四十九日の法要」「満中陰の法要」と書く部分では、神式では「五十日祭」、キリスト教では「昇天記念日」となります。
忌明けという言葉も神式やキリスト教では使用しません。
御香典も御玉串料、帰幽や帰天、出直や昇天なども宗派によって言い方が変わります。
また、神式やキリスト教の場合、「志」や「満中陰志」と書くのしの表書きも、「偲草(しのびぐさ)」となります。
文例は以下のとおりです。
謹啓
御一統様にはお障りもなく御機嫌およろしくお過ごしの事と
お慶び申し上げます
先般 故父 ○○ 儀
帰天(カトリック)・帰幽(神式)・出直(天理教)・昇天(プロテスタント)
に際しまして手厚きご弔慰と御尊重なる御玉串料を賜りまして誠に
有難く幾重にも御礼申し上げます
お蔭をもちまして五十日祭を滞りなく
仕えさせて頂きました
就きましては早速拝眉親しく御礼申し上ぐべき筈でございますが
略儀にて旁々御礼申し上げます
敬具
令和 元年
住所
氏名
尚 偲草のおしるしまでにほんの心ばかりの品を
御受納下さいますようお願い申し上げます
香典返しを贈るタイミングは?
香典返しは、忌明けの法要後、1ヶ月以内を目安に贈るのが一般的なマナーです。
宗派によって忌明けの時期が異なりますが、亡くなられてから約30日~50日後に忌明けとなるので、そこから1ヶ月以内に贈りましょう。
その期間よりも遅くなってしまう場合は、香典返しに添える挨拶状に遅くなったことへのお詫びの一文を入れましょう。
挨拶状を添えて感謝の気持ちを伝えよう
職場の人や友人から葬儀やお通夜の際に頂く御香典。仏事に関しては、若い人の中ではあまり経験がないという人の方が多いでしょう。
法要の際の礼節やマナーについて、自信があるという人もそう多くはないのが現実です。
香典返しの品物に添える挨拶状について、郵送の場合は添えるのが一般的だとわかっていても、挨拶状の入れ方や書き方、マナーなど、慣れてないが故に恥ずかしい間違いをしていないか、相手に失礼なことをしてしまわないか、不安になる人もいるでしょう。
香典返しの品物を購入するときに、挨拶状や挨拶カードを無料でサービスしてくれる店舗もあるので事前に確認してみるのも良いでしょう。
いざという時に失敗しないためにも、最低限のマナーやルールを知っておきたいですね。
香典返しという日本ならではの習慣は、年配の人へ贈る場合もあります。
そんな時に「若いのにしっかりしてるね」「礼儀正しい丁寧なお返しをありがとう」といってもらえるように、挨拶状の書き方や熨斗のマナーについて、理解しておきましょう。