そもそも内祝いにはなぜ祝いの文字が入るのか?
内祝いは、日本で古くから受け継がれてきた風習で、地域により若干の違いはあるものの、人との結び付きやお付き合いに欠かせない礼儀として根付いています。
昔は、結婚式場や葬儀場などの冠婚葬祭事業を目的とした会社がない中で、何かあれば親族や隣近所で助け合いながら生活してきました。
お膳や食器、座布団の貸し借りだけでなく、振る舞いの食事も近隣の女性が手分けして炊事場を切り盛りして協力していました。
そのような互助の精神で近所付き合いを行ってきて、その場を手伝ってくれた人たちに感謝の気持ちを金品で表すのが内祝いの始まりと言われています。
出産にしても、昔は出産の設備のある産院が少なく車もなく、お産婆さんや近所の人手を借りながら命がけで生む時代でした。
粉ミルクもない時代のため、母乳が出なければ代わりの乳母が提供して地域ぐるみで子育てを協力し合っていました。
そのように多くの人の力を借りて無事に出産できたというお礼の気持ちで、駆け付けてくれた人へ手土産を渡したのです。
来られなかった遠くの親族や友人知人には、無事生まれたことを知らせる意味で挨拶代わりに内祝いの品を贈ることもありました。
たとえば、家を新築するときは、上棟式でお餅やお菓子、硬貨を近隣の人たちにばら撒く風習が残っているところもあります。
地鎮祭や上棟式は、神主を呼んで行う祭礼として古い歴史があります。
この場合も、内祝いと同じように、工事の職人さんへ今までの労いと今後の無事を祈って感謝の気持ちを表す引き出物を渡したり、近所の人へ記念品を渡したりしていました。
このように内々のお祝いで記念品や引き出物などの品物を贈り、一緒に慶びを分かち合い、そちら様にも良いことが起こりますようにと幸せのお裾分けをするのが内祝いです。
そのため、本来の内祝いは、進学、結婚、出産、新築などの慶事を迎えた側が、お世話になった人への挨拶品を贈るのが習わしでした。
しかし、この内祝いの考え方は諸説あり、時代の流れと共に少しずつ変化を遂げています。
というのも、現代では結婚や出産などは親族や隣近所の人の手を借りずとも、結婚式場や産院で事足ります。
それまで慣例だった周囲の協力を仰ぐことなく、慶事を迎える本人たちが費用を負担して行うようになりました。
そのため、「おめでとう。
お手伝いできないが少しでも費用の足しにしてください」という意味も含め、お祝い金やお見舞金などを贈るようになったのです。
それに対して「ありがとうございます」と品物でお返しをするのが「内祝い」となったわけですね。
現代では、この流れが一般的ではありますが、中には昔ながらの風習に従って先に内祝いを贈る地域もあるかもしれません。
ただし、結婚披露宴のゲストが受付で渡すご祝儀に対しては、内祝いではなく「引き出物」としてお返しすることになります。
通常は、引き出物と内祝いを二重に贈る必要はありません。
しかし、明らかに過剰なご祝儀をいただいている人へは、後日内祝いとして贈ることもあるでしょう。
内祝いはいずれもおめでたいお祝いごとに付随するお返しです。
慶事と弔事は対極にあるもので、最近不幸があった家庭や喪中の場合は、渡しかたや贈るタイミング、選ぶ品物にはよくよく注意をしなければなりません。
内祝いを渡すタイミングはいつ頃が適切?
一般的には、お祝いをいただいたらお返しをするのが礼儀ですよね。
しかし、友人同士の誕生祝いのパーティーや贈り物に対しては、内祝いというお返しはありません。
なぜなら、その友人の誕生祝いで同じようにプレゼントを渡すからです。
それと同様に、子どもの成長の中での入園祝いや七五三、入学祝いに進学祝い、成人祝いなどに対しては、お返しは必要ないとされています。
なぜなら、出産以外で子どものお祝いを贈り合うのはごく親しい人たちに限られ、相手も同じような家族構成の場合、お互いにお祝いのやり取りをするお付き合いになることが多いからです。
とはいえ、子どものいない家庭から一方的に贈っていただいてばかり、ということもあるかもしれません。
「お返しは不要」と言われない限りはどう対応してよいか悩んでしまうこともあるでしょう。
よほど近い関係でない限りは、半返しをするか何かの折に贈り物をするなど不公平感のないように配慮すると良いでしょう。
他の、結婚内祝い、出産内祝い、快気内祝い、新築内祝いなどについては、お返しのタイミングはどうしたら良いのでしょうか。
それぞれのタイミングに厳格なルールがあるわけではありませんが、それでも一般的に常識とされるマナーがあります。
結婚の内祝いならば、挙式や披露宴を行わない場合は入籍してから1カ月以内を目安にします。
その程度の期間が空いても、新婚旅行で不在にしているか、引越しの後片付けやさまざまな手続きで色々と忙しいのだろうと理解してもらえることが多いからです。
出産の内祝いを贈るタイミングは、状況次第で構いませんが1カ月から2カ月までを目処に済ませたいところです。
というのも、新生児のうちは混雑するような場所に連れ出すのは避けるべきで、初の外出の目安とされるのが1カ月健診の頃になるでしょう。
順調に育っていれば、お宮参りに出かけるなどして徐々に外気に触れさせていくことになります。
母体の回復期を考えても、あまり早いうちに混雑する場所に出かけて内祝いの品を選ぶような無理することはないでしょう。
また、事情によっては子どもがしばらく保育器に入っていたというケースもあり、ある程度の期間が経過しないと退院できないということもあるものです。
それらのケースを考慮すると、やはり2カ月経過しないうちにはお返ししたいですね。
あまりにお返しが遅いと、出産祝いを贈った人たちに何かあったのかと余計な心配をかけさせてしまいます。
もし、日中の面倒を見てくれる人がいないときや風邪などが流行っている時期は、無理に外出せずギフトの通販の品物を選んで手配すると手間がかかりません。
病気による入院などのお見舞いをいただいていた人には、退院後1カ月以内に快気内祝いを贈ります。
新築祝いの場合は、新築完成披露会で自宅に招いた人へは帰るときに内祝いを持ち帰ってもらう方法もあります。
しかし、実際どんなお祝いをいただくかわからないのに、先走って用意するのも抵抗を感じるかもしれません。
新築内祝いのお返しはなるべく早く、遅くとも1カ月以内には済ませたいですね。
お祝いと葬儀が重なってしまったときの対処
たとえば、結婚式に出席する予定の日に、思いがけず知人の葬儀が重なってしまったときは、どちらに行くべきでしょうか。
結婚式はかなり前から招待されていて出席の返事を出してしまったので欠席するわけにいかない、と悩まれる人もいるかもしれません。
このようなときは、弔事である葬儀への参列を優先するのが一般的です。
故人との最後のお別れをするのは、そのときしかできないからです。
一方、結婚式を急遽欠席することになっても、落ち着いてから後日他の形で個人的にお祝いができます。
突然に起こった不幸で結婚式をドタキャンすることになっても決して非礼には当たりません。
新郎新婦には直接伝えず、結婚式場に速やかに連絡を入れて、受付に「よんどころない事情で止む無く欠席する」ことを伝えてもらえば良いでしょう。
おめでたいお祝いの席に水を差さない配慮が大切です。
欠席理由をぼかすことで理解してくれるはずです。
一緒に参列することを楽しみにしていた親しい友人がいるなら、理由を説明して新郎新婦へは後で自分からお詫びすると伝えると良いでしょう。
ただし、故人との関係の深さを考慮したうえ、誰かに香典を立て替えてもらうか弔電を送るかで済む場合は、近しい関係のほうの結婚式を優先しても問題ありません。
相手が喪中の場合にはいつを目安にしたらいいか?
内祝いを渡すタイミングで、相手の身内に不幸があったことがわかった場合はどうしたら良いのでしょうか。
家族や親戚、上司や先輩、友人知人などと年賀状をやり取りしている人なら、「新年の挨拶を失礼します」という内容の喪中の欠礼はがきを受け取ったことがある人は多いでしょう。
そのような喪中の相手に「新年おめでとう」とお祝いムードいっぱいの年賀状を送るのは失礼に当たります。
同じように、相手が喪中だと知ったなら内祝いを贈るのも避けるべきです。
いつまでを服喪中とするかにもよりますが、一般的には仏式の四十九日までは「忌中」であり、四十九日法要が終わり命日から四十九日が経過すれば「忌明け」になります。
神式では五十日祭が過ぎてから、キリスト教では忌明けの概念はありませんが1カ月目の儀式が終われば忌明けと同様とされています。
無宗教の場合でも、同じ程度の日数の経過を見れば良いでしょう。
忌明け後は、次の命日までの一年間を喪中とする場合が多いです。
喪中の家庭では、基本的にお祝いごとは喪が明けるまではタブーです。
しかし、内祝いを受け取る場合は、喪中であっても忌明け後なら差し支えありません。
ただし、故人との関係性により大きく影響してくることがあります。
故人が乳幼児であった場合、忌明け後を見計らって早々に出産内祝いを贈るようなことは避けるべきです。
忌明けしたからといってすぐに悲しみが癒えるものでもありません。
相手の事情を十分に考慮し、相手の気持ちが落ち着いてから贈るのでも失礼には当たりません。
まずは、相手へのお悔やみを優先し、いただいたものへの感謝の気持ちを伝えると共に、後日心ばかりのご挨拶の品を贈らせていただくと添えると良いでしょう。
その際は、内祝いではなく「御礼」としたほうが無難です。
自分が喪中のときの内祝いはいつ渡す?
それでは、自分が喪中になってしまった場合は、内祝いをいつ渡したら良いのでしょうか。
配偶者や親、兄弟など近い身内を亡くしたなど深い悲しみで辛いときには、無理して内祝いの品物を選んで贈る必要はありません。
お祝いを贈ってくれた相手にも身内の不幸は伝わっているでしょうから、少しぐらい内祝いが遅れたからといって目くじらを立てる人もいないでしょう。
むしろ、年配の人の中には、喪中の家庭から物が贈られることを快く思わない人もいるため用心に越したことはありません。
ただし、実家の曾祖父母や祖父母が亡くなったが、自分は実家を出て嫁いだというような場合は、予定通り内祝いの品を贈っても問題はないでしょう。
どうしたら良いか迷うときは、親族や地域の年長者に相談できる人がいるなら尋ねてみると良いですね。
喪中の際は注意!内祝いの品の選び方
喪中の相手に内祝いを贈る場合は、その時期にもよりますが品物選びも慎重にしたほうが良いでしょう。
あまりにも派手な色合いやデザイン、キャラクターグッズやおめでたい雰囲気が感じられるものは避けるようにします。
かといって、お茶や酒類などでは弔事の際の香典返しを連想するラインナップのため、内祝いの品物としてはふさわしくありません。
並びに、白いハンカチも故人の顔に掛けたり涙を拭いたりする悲しいイメージがあります。
櫛は苦と死につながる忌み言葉です。
他にも、切る、離れる、終わるなど不幸や別れを連想させる品は、避けたほうが安心です。
包装紙もなるべく派手な色柄物ではなく、香典返し用以外の落ち着いた色や柄の包装紙を選びましょう。
喪中のときに内祝いを渡す基本的なマナー
相手が喪中であり、内祝いを贈るのがはばかられるようなときは、のし紙には「内祝い」の「祝」の字は使わないほうが良いでしょう。
代わりの言葉として「御礼」が適しています。
直接手渡したりお礼状を書いたりする際も、「祝」の言葉は意識して使わないように気をつけましょう。
まずは、相手を気遣いお悔やみの気持ちを表し、「先日のお礼を贈らせていただいた」ことが伝わるようにします。
宅配便で送る場合も、同封のお礼状や手紙、メッセージカードは華やかなデザインは避け、落ち着いた控えめなデザインのものを選びましょう。
迷ったら、インターネットで例文を検索してみましょう。
喪中の内祝いは適切な時期を選んで贈ろう
内祝いとは身内の慶事でいただいたお返しに贈るものです。
なるべく遅れることなく適切な時期に贈る手配を済ませましょう。
万一相手や自分が喪中の場合は、少しぐらい時期がずれても構いません。
事情を十分に考慮し、失礼にならないタイミングで、お礼の品物としてふさわしい品物を選んで贈りましょう。
どんな品物を選んで良いか悩んだ場合は、ギフトの通販サイトなら最近の人気商品の傾向がわかり参考になりますよ。